私は夫の転勤に伴い、北海道、東北、四国、中国、九州のそれぞれに数年ずつ住んだ。
どこへ行っても必ず地元で愛されるおいしいお菓子があった。
転勤先で知り合った各地からの転勤族とは挨拶がわりに、お互いの地元のお菓子を交換し合った。まるで、全国各地のお菓子の品評会だった。この経験を通して、私の脳内に全国おいしいお菓子マップが出来上がった。
例えば、秋田県なら「〇〇〇」が、群馬県と言えば「✕✕✕」が思い浮かぶという感じだ。
これは、私の独断と偏見によって作られたお菓子マップだ。
今日は、このマップから、一部を紹介しようと思う。
≪四国から≫
『一六タルト』
(由来)愛媛県松山市にある「一六本舗」が出しているお菓子。「一六タルト」は正保4年(1647年)久松家初代松山藩主 松平定行公が、長崎の海上警備にあたった時、南蛮菓子タルトに接し、その味をめでて、製法を松山に持ち帰ったといわれているそうだ。
(味)柚子の爽やかな風味と、やさしい甘さのこしあんが、ふわふわのスポンジに巻かれていて、和洋がミックスした新鮮な味わいがある。見た目がロールケーキなのに、食べると羊かんを感じる。懐かしく、ほっとする味。
(値段)ネットで調べた現在価格は、3個入518円。
≪東北から≫
『だまこ餅』
(由来)秋田県能代市にある「セキト」というお店が出しているお菓子。一口サイズのおもちの中に、とろとろのゴマダレが入った和菓子。食べる時は、ひと口で食べること。これは、口からゴマダレがこぼれて、衣服を汚さないためです。
(味)つるつるもちもちのひと口サイズの餅を口に含み、そっと歯で噛むと、プチっとはじけて、一気にゴマダレがあふれ出てくる。黒ゴマの香ばしく濃厚な風味と上品な甘みが口いっぱいに広がる。
(値段)ネットで調べた現在価格は、10個入702円。
それぞれのお菓子には、味と共に、初めて食べた時の情景が記憶に残っている。
「だまこ餅」を食べた時は、餅を口に入れようとした瞬間、餅をくれた人から
「ひと口で食べて!」
と注意を受けて、『なんで?』と不審に思いながらも言われたとおりにした。彼女が親切で言ってくれていたことが、あとから分かったのだが、中のゴマダレは、あんこというよりむしろスープに近くてうっかりすると口から滴り落ちてしまい服に真っ黒いあとがつくのだ。いたずら要素もあるお菓子だった。
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